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昔もイマも“感動”を与えてくれるバウムクーヘン
ゆったりと時間が流れる癒やしの空間で食事や宿泊が楽しめる〈さんたべーる〉は、この地で生まれ育った三島貴文社長が「奥美濃を盛り上げたい」との思いで2000年に開業。
屋号はイタリア語で直訳すると“聖なる食堂”。
「ゲストが奥美濃のおいしいものをたくさん食べーる」という願いも込められている。
今や観光シーズンともなれば地域住民や観光客でにぎわい、広々とした駐車場も連日満車状態に。
そんな同店のバウムクーヘンショップ〈NICOEM〉がオープンしたのは2022年10月のこと。
不二商会との出合いについては、2020年に名古屋で開催された展示会だったと話す。
※画像は2022年FOOMA JAPANのブース
三島社長「さんたべーるでは自家製のパンを提供していて、その日もとあるメーカーの、バケットを効率よく焼けるオーブンを目的に訪れたんです。
会場内を歩いていると、不二商会ブースの装飾である大きなバウム形のバルーンが見えて、もともとバウムクーヘンが好きなのもあり、気になって訪れました。
私が効率性重視なのもあり、会場に展示されていた実演機〈フレイヤ〉の“人時生産性を向上させる”という点にも魅力を感じましたが、何より試食で配られていた焼きたてバウムクーヘンを何気なく食べてみたら、驚くほどおいしくて。
昔に食べたバウムクーヘンを思い出して、なんだか懐かしい気分にもなりましてね」
三島社長が初めてバウムクーヘンを口にしたのは幼少の頃。
親戚の結婚式の引出物でもらい、幼心にもそのおいしさにいたく感動したそう。
展示会で、頭の片隅に眠っていた味の記憶が呼び起されたことから、バウムクーヘンビジネスに関心を寄せるようになり、不二商会の工房で行われた勉強&商談会〈繁盛提案会〉に参加することに。
古臭いイメージが一新! 革命的バウムに心打たれて
※写真は2022年国際6次産業化EXPOの展示
繁盛提案会で不二商会を訪れた三島社長の心をわしづかみにしたのは、工房のショーケースだったと言う。
三島社長「ケース内は、誰もが思い浮かべる定番の丸太形のものだけでなく、目を引くデコレーションが施されていたり、クッキー生地をまとって見た目がトゲトゲしていたり、農作物そのものに似せて仕上げられていたり…と、見た目も味も食感も、何もかもが目新しいバウムクーヘンがずらり!
具体的な話を聞いて、実演を見て、試食もさせてもらって、不二商会が提案する最新のバウムクーヘンを深く知るほど、どんどん惹かれていきました。
おまけに、誰もが知っている有名店や、私が気になっていた長野のてまり形バウムも不二商会製のオーブンで焼かれていると知り、信頼できる会社だという印象を持ちました。
ただオーブンをはじめ、周辺機器まで一式そろえるとそれなりの資金が必要で、妻に相談してみると、事業再構築補助金を活用できないだろうかという話になって。
『補助金が採択されたら、バウムクーヘンビジネスを始めたい』
と思っていたので、結果を見た時はうれしくて、すぐに不二商会の営業担当のSさんと連絡を取り合いましたよ!」
そこから、バウムクーヘン専門店づくりのスペシャリストで構成された〈FUJI DESIGN SYSTEMA〉による現地訪問や打ち合わせ、焼成研修を重ね、さんたべーるの建物の並びにある倉庫を店舗に改築。
2022年のお盆明けにはバウムクーヘンオーブンを含む機器類が搬入・設置された。
試運転まで終えると、その後は店長で息子の大輝さんにバトンタッチし、フル稼働でバウムクーヘンの製造がスタート。
「というのも、NICOEMのバウムにも使用している地元の米粉の製粉会社から、地域の幼稚園、小・中学校の給食で振る舞うため4000個作ってもらえないか、と相談を受けていたんですよ。
納期は試運転の1週間後だったので間に合うかヒヤヒヤしましたが、息子が中心になって頑張ってくれて、無事に地域の子どもたちに“地元のお米からできたバウムクーヘン”を食べてもらうことができました」
同店では、霊峰白山の恵みを受けて育ったコシヒカリの米粉を使用し、食物アレルギーに配慮したものを提供。
バウムクーヘンは世代問わず愛されるお菓子だからこそ、“安心・安全・地産地消”でグルテンフリーにこだわるのだとか。
〈NICOEM〉の存在やおいしさは、学校給食で食べた子からその家族へ口コミで広がり、前評判は上々。
グランドオープンの前から稼働していた、バウムクーヘンの自動販売機もほぼ連日売切れ状態が続いたそう。
リゾート施設を目指して新商品の開発へ
バウムの焼成や店舗の運営は、基本的に息子の大輝さんが一任されている。
三島社長「“おいしいだけじゃないバウム”を多くの人に食べてほしいからと、配合の水分量や使用する材料の吟味には随分と時間をかけたみたいですよ」
体への優しさに加え、味わい、口あたりまで追求したバウムを求め、オープン日も店内はゲストが途切れることなく出入りしていた。
今後の展望を三島社長に尋ねると、
三島社長「家族で力を合わせ、ここを自然が満喫できる観光リゾート地にしたいと思っています。
今ある民宿、イタリアン居酒屋、バウムショップに加え、ツーリング客用にライダースカフェ、オートキャンプ場や星が見えるサウナなんかも設けるとおもしろそうだなと考えています。
バウムはお土産という位置づけで、国道156号線の“1・5・6”とかけて〈“イチコロ”バウム〉や、バイクの車輪に見立てた商品づくりなど、既に息子が開発を進めています」
バウムクーヘンも含めスイーツは、おいしくて当たり前の時代。
人気店のように“たかがバウムクーヘン”を“わざわざ買いに行きたい、特別な品”に格上げさせるカギは、地域性やオーナーの思いに沿った商品展開とブランディングが実現できるかどうか。
〈さんたべーる〉発展の一助となりうる〈NICOEM〉の店舗・商品づくりに、今後もビジネスパートナーとして積極的に関わっていきたい。
担当営業・Sより
補助金の採択前にも、一度打ち合わせで〈さんたべーる〉を訪れました。
三島社長はその時から、もはややる気に満ち溢れていて、補助金採択の結果を見た時は私もうれしい気持ちでいっぱいでしたよ。
バウムクーヘンの製造経験がない方は、当社の工房や、機器類搬入後の現場で焼成研修を受けられてからも、焼き方やオーブンの使い方のことで問い合わせを受けることがよくあります。
三島社長の息子で店長の大輝さんは、自力で学校給食の4000個を作り切ったり、仕込みや焼成を習得してまもなく新しい製造のスタッフさんにレクチャーしていたり、と若いのにしっかりしている印象です。
『親子でこの場所を魅力たっぷりの観光リゾートに進化させたい』
その夢の中にバウムクーヘンも加えてもらえるのは、うれしいですね。
PHOTO GALLERY
MACHINE
今回納品した機器はコチラ⇒働き方改革 三種の神器
新型のバウムクーヘンオーブン〈フレイヤ〉は、従来機の約半分の時間で、約φ130mm・全長約60cmのソフトバウムクーヘンを最大6本焼成することができる。
職人が焼きに集中できる〈生地供給ポンプ〉と、指定のピッチで一気にバウムクーヘンをカットする〈一斉切りスライサー〉を合わせることで人時生産性が向上。
SPACE DESIGN
屋号は〈FUJI DESIGN SYSTEMA〉のブランディングチームが提案。
三島社長は、さんたべーるのコンセプトにもマッチすることから、“食べると思わずニコニコ、ほほえむバウムクーヘン〈NICOEM(ニコエム)〉”を採用。
自動車のスピードでもすぐにバウムクーヘンショップと認識できるよう、息子の大輝さんが知り合いの建築業者に依頼し、大きなバウムクーヘン形のサインを制作。
遠くからでも目に入り、目印&フォトスポットとして親しまれている。
現在はさらに大きいサイズに
壁や陳列棚にはパッケージのカラーが映える淡い色を採用
BRAND&PRODUCT
プレーンのソフトバウムとハードバウムのほか、イタリア料理の定番、ペコリーノチーズの風味豊かなムースバウム、レモンのハード、ナッツ類がのったチーズインバウムなど、イタリアンエッセンスも感じられるラインアップ。
ゲストからひときわ熱視線を注がれているのは、毎日4種類ほどが並ぶチーズインバウム。
〈FUJI DESIGN SYSTEMA〉のブランディングチームが手がけたWEBサイト内にある、オンラインショップでも購入可。
画像はプレーン
TRAINING
不二商会の工房と機器搬入後の現地で、機器の使い方やおいしいバウムの作り方を覚えるには欠かせない焼成トレーニング研修を合計5日間実施(7月と8月)。
不二商会で行われた研修には家族おそろいの〈さんたべーる〉Tシャツで参加。
基本情報
ADDRESS/岐阜県郡上市白鳥町長滝351
Web/Home Page & Online Shopping
Instagram/@nicoem_baum